ベトナム料理、アオザイなどの服装、小物、ベトナム語などベトナムの文化は個性的なものが多くみられます。
一方で、建築からは、ベトナム固有の文化を感じることは少ないように思います。先日、ベトナムの名作住宅は何か?という質問をうけたので、それについて考えてみました。
1) ホーチミンの家
ハノイのホーチミン廟を向かって右側のゲートを入ると、ホーチミン氏の晩年使っていた家があります。1958年に建てられたこの高床式の住居は、住まいと同時に執務室でもありました。ソンラー省やホアビン省へいくとよく見られる高床式の家、ニャーサンを参考にモダンなデザインでつくられたこの住宅は、前面に池をそなえ、ランドスケープとも調和した古典ともいえる構成を感じさせます。プロポーションはそれほどきれいではないのですが、ベトナムの高温多湿の気候にあわせてつくられてきた住宅の経験をとりこんだ建物として価値をもったものであると思います。
建物については下記、ハノイ歴史研究会の大西和彦先生の説明が詳しいです。
2) …
そのほかに思いつかなかったので、2以降はありません。私たちのHouse for Trees, Stacking Green, Green Renovationはそれぞれ住宅のひとつのモデルとしての価値をもったものであると思いますので、時間がそれを評価してくれると思います。
どうしてこれまでにあまりすばらしい住宅がつくられてこなかったのか、と考えてみると、ベトナムは元来、自然豊かな国で、気候もそれほど寒くならない。そういう場所なので、屋根さえあればなんとかなります。だから、恒久的な住宅というシェルターがそれほどもとめられてこなかったこと。また、度重なる戦争で、住宅自体のストックが長く保存されなかったこと、などがあげられると思います。
こうしてみてみると、ベトナムの住宅にすばらしいものがまだあまりできていないのが、ベトナムのスタッフの勉強の機会につながらないのが残念なところです。建築設計では、先人から学ぶものが多い。そういう意味で、すばらしい住宅作品や建築作品がある日本で育ち、勉強できたことはとてもよかった。そして、その経験をより活かせるようにしたいと思います。