成功しているホテルの設計アプローチ【ベトナムの2つの事例を通して】

 

はてな

「ベトナムで成功しているホテルブランドについて知りたい」

「ホテルの設計コンセプトをどうやって決めたら良いか」

「結果を出すのにどれくらい予算が必要なのか」


ベトナムのホテルについてのこういった疑問に答えます。
 
  

この記事の内容

1.成功しているホテルの設計アプローチ【ベトナムの2つの事例を通して】
2.設計コンセプトを決める際に目標にするとわかりやすいターゲット:賞
3.予算が潤沢にあるなしに関わらずアイデアが大事な理由

 
 
僕は2010年からこれまで、ベトナムで11年以上、100以上のさまざまなタイプのプロジェクトにかかわってきました。

5つ星、4つ星ホテルの設計にもたずさわり、多くのホテルを訪れ滞在しました。

この記事では、その経験を通して見てきたこと、考えていることをお伝えします。
 

1.成功しているホテルの設計アプローチ【ベトナムの2つの事例を通して】

まず、僕が見てきた2つのホテルプロジェクトについてご紹介したいと思います。
 
 

その① フラミンゴ・ダイライ・リゾート - Flamingo Dai Lai Resort

(c) Flamingo Dai Lai Resort

ハノイから北西に50キロ、ノイバイ空港の向こう側へ。

車では約1時間半の距離に位置しています。

⇒Flamingo Dai Lai Resort ウェブサイト
 

ダイライ湖(Dai Lai Lake)という500ヘクタールの大きな人工湖の脇に作られた5つ星の郊外型リゾートです。

ベトナム人旅行客を海外に送り出している旅行ツアー会社、ハノイレッドツアーズ(Hanoi Red Tours)が国内に作ったリゾートホテル。
 

約60ヘクタールの敷地に、2009年にまず別荘地として土地分譲からリゾートの運営をスタート。

その後すぐ、2013年に5つ星ホテルをオープンしました。
 

僕は、2010年から250人収容の竹構造のダイライ会議場(Dailai Conference Hall)の設計にたずさわり、2013年に竣工させました。
 
 

週末滞在型リゾートの草分けのひとつとしての存在感

ハノイから1時間半と近いわりに自然が豊富なリゾートで、日帰りでもいけることから家族のプライベート利用、会社のイベントなどのビジネス利用ともに多くのお客さんが利用しています。
 

ハノイ郊外の週末滞在型リゾートの草分けのひとつでブランドとしても認知されています。

空気が悪く子供の遊び場が少ないハノイ市街から離れて、自然の中でゆったりと過ごせることができること、リゾートまでの道も整備されてよくなりゴルフ場も併設されたこと、などから日本人、韓国人のファミリー客も増えています。

ピークシーズンの週末は予約がむずかしいことでも有名です。
 
 

「緑の中で過ごしたい」を実現したリゾート

大きな湖の脇ということもあり、自然を魅力的に楽しめる立体的なランドスケープを作っています。

当初から会長さんの意思「ごみごみしたハノイから離れて自分が快適に過ごせる自然の中の場所がほしい」がリゾートのコンセプト設計に関して大きく影響しています。

「緑の中で過ごしたい」というニーズを率直にかたちにしたリゾートです。

手始めとして別荘地の分譲開始時にクラブハウスとして竹で作った建物、バンブー・ウィング(Bamboo Wing)をつくりました。

 

(c)Hiroyuki Oki


自然と接続したリゾート内のランドスケープとともにその建物の雰囲気がメッセージシンボルとなり、多くのハノイのお金持ちがこの別荘地を購入しました。

当時はアクセス道路も十分に整備されておらず交通は大変不便だったにもかかわらず、です。

その後、作られていた5−6部屋をもつ3棟の大きなビラに加えて、バンガロータイプのマウンテンビラ、レイクビュービラ、会議場を新たに建設し5つ星リゾートホテルが開業

丹羽がたずさわった会議場の受け付けとロビーが、リゾートのチェックインロビーとして使われていました。(新しいレセプションが2018年にできるまで)

 

(c) Hiroyuki Oki


この竹構造の2つの建物はダイライ・バンブー・コンプレックスとして2014年、アジアの建築家協会が集まって運営するアジア建築評議会ARCASIAの選ぶアルカシア賞のホスピタリティ部門で金賞。さらにその年のビルディング・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。

また、フラミンゴ・ダイライ・リゾートは建築デザインメディア、デザインブーム(designboom)の選ぶトップ10ホテル&リゾートに選ばれました。

これらの実績をPRに積極的に用いてブランドを作りながら、自然の中のアート、ゴルフ場建設、高層のリゾートコンドミニアムの建設など、発展が続いています。
 
 

その② ナマン・リトリート - Naman Retreat

ダナンとホイアンの間、地域の観光ランドマークである五行山の近くに作られた5つ星ビーチリゾートホテルです。

僕は第一期、立ち上げのときにたずさわりました。

⇒Naman Retreat ウェブサイト
  

ハノイでホー・タイ・ウォーターパーク(Ho Tay Water Park)を作ったタイン・ドー・グループ(Thanh Do Group)が投資しています。
 

ナマンリトリートは二期拡張もされ、さらにラック・ロン・クアン通り(Lac Long Quan Street)を挟んだ反対側でCOCOBAYに投資。

プロジェクト発足当時はサッカー選手クリスチャン・ロナウドを大胆に起用したPR戦略で有名になりました。
 
 

ベトナム発のリトリートリゾートとしての成功

当時は、ダナンで成功しているホテルは海外ブランドのリゾートばかりで、その中でこのナマン・リトリートはベトナム発のブランドとして大きな挑戦でした。

デザインとともに、滞在者が使えるマッサージ・スパ(要予約)のサービスが人気で今ではベトナムのリトリート・リゾートのひとつとして認知されています。
 

設計から開業まで2年かからずにオープンしたハイスピードな立ち上げもすごかった。

開業まで最短でこぎつけるために、工事と設計が同時に行われました低層で建物をつくることで短い工事期間で120室のホテルがオープンしています。
 
 

低層高密度の竹と緑を使った新しく懐かしいベトナムらしい風景

ビーチ側は海への眺望を最大限に活かした大きなインフィニティプールをつくり、その周辺に竹構造のメインレストランとプールバーを配置

ホテルのブランドの中心エリアになっています。
 

(c) Hiroyuki Oki

 
宿泊エリアは、海から一直線に伸びる緑に囲われたメイン動線を確保しながら、低層の高密度なベトナムの村のようなスケールでつくりました。

ローカルの石と緑を組み合わせた立体的で奥行きあるランドスケープデザインです。
 

(c) Hiroyuki Oki

 
皆が使うパブリックなスペースは竹構造で、プライベートなスペースは石などの自然素材をベースに緑が豊かなスペースとして作ることで、新しく懐かしいベトナムらしい風景ができています。

香港の有名なデザイン賞であるDFAデザイン・フォー・アジア・アワードでは、グランドプライズを受賞

その他多くの賞を受賞しています。
 
 

2.設計コンセプトを決める際に目標にするとわかりやすいターゲット:デザイン賞

ホテルは日常から離れて非日常を楽しむための場所です。

では、その非日常をどうやってデザインするのか、デザインを決定するのか 
 

そこで、僕が提案するアイデアはちょっと乱暴な考え方もしれませんが、

ポイント

そのデザインが「賞」をとれるだけの十分な力強い価値を持っているか?

という視点で精査することです。
 

多くのデザイン賞に応募してきて、賞を受けるためにはデザインが良いのはもちろんですが、その建物の背景やホテルのコンセプトも含めて語ることが必要です。

設計コンセプトの時点でそのプロジェクトの魅力を十分に語れる。

そうでなければ、そのホテルのデザインを含めたコンセプトに十分な力がまだ足りない、そう考えます。

賞をとれるだけのユニークさ、シンボル性があること。

それが非日常の創出に大きく近づくと思います。
 

上に紹介した2つのホテルすべて、デザインに挑戦し、賞に結びつけています。

そして、その受賞を、しっかりPRに使うことによって、近隣のホテルと差別化が図れる。

ホテルのコンセプトの確認にもなります。
 

実際に設計の中で確認するとすれば、ブレインストーミングが良いでしょう。

たとえば具体的なデザイン賞をターゲットとして決めて、それに応募するときに、どんな風にプロジェクトを説明するか、過去の受賞作品をみながら作戦会議をしてみるのが良いかもしれません。

その活動を通してより確信が強まったり、あるいは弱いところが見つかったり、よりよいアプローチが見つかったり、まだ確信が持てなかったり、という共通認識がチーム内で持てると思います。
 

とはいえ、「デザインは専門でないからわからない」、と思われる方がいるかもしれません。

もちろん、そのデザインをつくるために僕たちデザイナーがいるのですが、できたもののデザインの良し悪しというのは、一般人でもわかる

子供にでもわかることです。

自分が良いと思って人に伝えることができる、そう思えるならばそれは良いデザインコンセプトだと思います。
 

そういう「賞」という視点でデザインを検討することで、保守的で無難なデザインより、ストーリーや場所の価値を活かしたデザインに挑戦することができると思います。

「賞」というターゲットを用いた精査方法です。
 
 

3.予算が潤沢にあるなしに関わらずアイデアが大事な理由

 
良いデザインを作って、賞をとるためには予算が必要なんでしょう?

そう思った方もいるかもしれません。
 

でも、お金をかけた=良いデザインではありません。

どんなユニークな価値を実現しているか、という視点のほうが重要です。

それがデザインされたり実現されていることが大切で、どれだけ高いものを使ったか、というのは評価対象ではありません。

僕はデザイン賞の審査委員もやることがありますが、むしろアイデアを使って低コストで良いデザインを実現しているほうが好印象です。
 

ですから、想いや熱意をかたちにするアイデアが必要ですし、そのために建築家、デザイナーがいると思っています。
  
  

最後に

これらのホテルのアプローチは日本でも東南アジアでもどこのホテルでも多様に展開できると思います。

ぜひベトナムに来られて上記3ホテルを訪れてみてください。
 

その際はハノイに寄っていただいたり、オンラインでお声がけください。

  • この記事を書いた人

丹羽隆志

建築家【経歴】東京都立大学&大学院(深尾精一研究室) ▶︎ 岡部憲明アーキテクチャーネットワーク ▶︎ VTNアーキテクツ パートナー ▶︎ 2018年4月にハノイで独立 ▶︎ 2020年サイゴン川歩道橋コンペで優勝 ▶︎ 妻・子ども3人 ● 一級建築士/ベトナム政府公認建築家/日越大学客員研究員 ● 石川県出身