ZONE9がもたらしたアートで街を活性化する芽

ハノイの話題スポットであった「ZONE 9」がクリスマス前の2013年12月23日に閉鎖されました。

ハノイ在住のアーティスト、建築家らが中心になって古いペニシリン工場の廃墟を改修したゾーン9は、カフェやバーなどの飲食店からスタジオ、画廊、イベントスペース、ブティックなどハイセンスなテナントが集まり、ハノイで一番のおしゃれスポットとして話題の最前線でした。

Zone 9, Tôi nhớ
Zone 9, Tôi nhớ

ハノイの魅力は、なんと言ってもその文化的な奥行き感。中国、フランス、少数民族など、さまざまな文化の影響が町並みからや食からも漂ってきます。その文化にさらに現代的なテイストが加わったZONE9。アートが街を変える起爆剤的な役割を担いそうなことからハノイのSOHOともいわれるほどでした。さらなる盛り上がりが期待されていた矢先、度重なる事故や手続きの不備により地元の役所の決定により閉鎖したそうです。

アート・デザインの力

アートが街を創り上げていくプロセスについては、浜野安宏さんの『人があつまる』にわかりやすい記述があります。

「俗悪化した場所を良くするには、アートやデザインに優先権を与えるに限る、このようにしてソーホーやトライベッカはアーティストが住み着き、それが上質のレストランを呼び寄せ、それらが一般客を呼んでくる。やがてファッションのブティックが出てくる、家具屋がくるというぐあいにアートとデザインがインセンティブとなって、地域起こしに繋がっていくのである。」(p.78) 『人があつまる』, 浜野安宏著, ノア出版, 2005年

俗悪というわけではありませんが、都市の発展の先行きが明示されていないハノイではどんどん近代的な開発がすすむ一方で、「ハノイらしい」街並みが消えていっています。

スクラップ・アンド・ビルドではない開発のあり方を示したZONE9。アートとデザインを機軸にして、本当にたくさんの人を呼び寄せることに成功していました。建物内でのポテンシャルが地域にあふれだし地域起こしに繋がる前に、不祥事から姿を消すことになってしまったのは残念です。

見る・見られる場をつくる

バイク社会のベトナムでは、みなピンポイントで出かけるため、ハノイの街にはおしゃれを見せて歩くストリートがありません。人々は日焼け対策、寒さ対策も万全にバイクで移動し、歩道は駐輪場のように使われ、歩行者の歩く場所がないので、人の流れも生まれません。

ZONE9は適度に大きなサイズの敷地と中庭が人々に歩く場所を提供し、それに建物からの立体的な視点も加わることで、おしゃれを「見る・見られる場」が創出されていました。

ハノイの若者が求めていた場所が、生まれていたわけです。

ですが、あまりにも急激に話題になりすぎたため、近隣の住人にとってZONE9は、地域と関係のない風変わりな若者や外国人を呼び寄せる迷惑な存在になってしまっていたのかもしれません。

ZONE9は可能性を若者に見せた

閉鎖されてしまったとはいえ、今回、ZONE9が残した成果は大きい。

「次のZONE9をつくろうぜ!」

はこれからのハノイで合言葉になる気がしています。

「一軒のビルからでも街は創れる。
一本のジーンズからでもマチは変えられる。」
(p.50)  『人があつまる』, 浜野安宏著, ノア出版, 2005年

ハノイの面白さは人と街並み。

次はストリートと一体になった計画が街をにぎやかすと地元も巻き込んだ大きなムーブメントが創れると思っています。

参考リンク

Vietnam Sketch: 廃墟からトレンドスポットへ

つまみの女王: ハノイのSOHO、ZONE9

『人があつまる』, 浜野安宏著, ノア出版, 2005年

  • この記事を書いた人

丹羽隆志

建築家【経歴】東京都立大学&大学院(深尾精一研究室) ▶︎ 岡部憲明アーキテクチャーネットワーク ▶︎ VTNアーキテクツ パートナー ▶︎ 2018年4月にハノイで独立 ▶︎ 2020年サイゴン川歩道橋コンペで優勝 ▶︎ 妻・子ども3人 ● 一級建築士/ベトナム政府公認建築家/日越大学客員研究員 ● 石川県出身