ベトナムから環境建築を発信する:「ハノイ・カルティベート・トーク01」

ハノイ・デザイナーズ交流会発足から1年。

「ハノイ・クリエイターズ・クラブ」へと名称を変更し、ハノイのクリエイター同士の交流から発信へと会の目的の軸足を移した第一回目の企画、「ハノイ・カルティベート・トーク01」が終わりました。

第一回目は、丹羽のベトナムにおける環境建築への取り組みをお話させていただきました。

ベトナムで環境建築に「なぜ」取り組むのか。

そして、「どのように」環境建築をとらえ、実現していくのか。

今回、ハノイに住んでいるクリエイターの皆さんにお話しするにあたり、自分の取り組みを振り返りながら準備をすることは、よい復習になりました。

ベトナムで完成にいたったプロジェクトについてまとめていると、ベトナムの緑・植物の存在感の強さが際立っていることに気づきます。

ここでは過程を省略して、ぼくが環境建築に取り組んで考えた結論だけを書かせてもらいますが、環境建築について考えていくということは、人間について観察していくこと。すなわち、使う人の感覚、慣習に導かれたデザインを実現していくことです。

そこでは、「わかりやすく気持ちいい」という言葉をベトナムで環境建築を考えるぼくの指標としてつかっています。

LEEDやベトナムのLOTUSをはじめとした環境性能評価基準は、取り組みとしてはすばらしいことですが、ベトナムという発展途上国での建設では、予算が潤沢でないこと、建物の性能をあげるための建材が通常使用するものに比べて格段に高額なことから採用の難しいことが多くあります。また、これらの指標は建物内でのエネルギー使用が前提とされていることが多く、まだ空調が普及しだしたばかりの建物内のエネルギー使用が少ないベトナムの建物事情を考えると実情と理想の乖離を大きく感じます。

さらにいうと、性能があがってもすぐ壊されるような建物では意味がありません。使い続けてもらうことをどう考えるか。人々が愛着をもってくれる建物をどうつくっていくか。そのためには、わかりやすい良さが必要です。そうでないとベトナムという国ではすぐに改変されてしまったり、メンテナンスがされなくなってしまうからです。ベトナムにおける環境建築の取り掛かりとして、「わかりやすく気持ちいい」緑を取りこむことはベトナムらしい建築を考える上での大きなヒントになります。

大木宏之さん撮り下ろしの写真が「わかりやすく気持ちいい」環境建築の空間とともにある生き生きとした緑の表情を写しだしています。

気持ちいい空間について深く考えていくと、人間の原始的な要求に気づきます。

人間は森へ帰る。帰りたい。

ちょうどハノイは冬を迎え、一年の終わりを感じる季節になりました。人も緑も冬支度しています。そして、緑の芽吹く春を迎えます。四季のリズムを肌で感じる喜びのある環境建築に取り組んでいきたいと思います。

ハノイ・カルティベート・トーク01 運営チーム

竹森紘臣、丹羽隆志、トラン・ダイ・ギア、見澤直美

参考リンク

ハノイ・クリエイターズ・クラブ facebookページ