ここハノイでは、官製の羊羹型集合住宅に水平方向の増築を見ることができます。
意図的にはつくれない複雑ななんとも面白い外観を作り出している、この増築。
ハノイの人は「虎の檻」と呼んでいます。
最初に作った人が檻屋さんだったのか、見た目にもなるほどと思うネーミングです。
各家のオリジナリティが建物ファサードをリズム良く彩っています。
すべての増築が独立構造というアクロバティックなこのエクストラスペース、
室内の狭さを補うために編み出された裏技だそうで、もちろん違法建築です。
やはり緑がすきなベトナム人。
多くの家が盆栽をおいて緑との生活を楽しんでいます。
ものによっては3メートル近く張りだしていて、構造的に心配はつきませんが、作り方はいたってシンプルです。
まず、箱の下側の両角に鉄骨梁を内側から飛び出させます。
控えはしっかりめにとってあって、鉄骨は界壁に打ち付けられてサポートされています。
先端をつり材で斜めにつったら主構造は完成。
それを足掛かりに床、壁、屋根がつくられていきます。
ほとんどの家は洗濯室やバルコニーとして使われているようですが、時には寝室としても。
一度、中に踏み入れたことがありますが、床は軽くするために少しふかふかするくらいの頼りなさでした。
隙間から下がのぞける仕上げのラフさも恐怖心を誘います。
最近は、羊羹型の集合住宅が再開発にあっていて、徐々になくなっていくであろうと思われるこの景観。
ハノイに来られたら、ぜひ、今のうちに鑑賞されてはいかがでしょうか。